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2023年08月21日

虫歯じゃないのに歯が溶ける!?若い人に多い「酸蝕症」

皆さん、酸蝕症(さんしょくしょう)についてご存知ですか?初耳の方もいれば、名前だけを聞いたことがある方もいるかもしれませんが、具体的な症状や原因、そして現在増加している背景についての情報はまだ十分に知られていないと思います。。 ここでは、わかりやすく酸蝕症について解説します。日常の飲食習慣や生活習慣が酸蝕症を引き起こす可能性がある点もご説明します。

酸蝕症って?

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酸蝕症の子供

酸によって歯が溶ける病気

酸蝕症(さんしょくしょう)は、酸によって歯の表面を溶かす疾患です。主に食品や飲料中の酸が歯のエナメル質を侵食し、歯が徐々に溶けていく状態を指します。この疾患は歯の表面を弱くし、歯の形や機能を損なう可能性があります。歯のエナメル質は非常に硬い組織であるため、酸の影響を受けやすく、長期間にわたる酸の曝露によって進行することがあります。

虫歯とは違うの?

酸蝕症と虫歯の違いは、主な原因や発症メカニズムにあります。
虫歯は、ミュータンス菌などの細菌が口腔内に存在し、砂糖や炭水化物を代謝して酸を生成することで引き起こされます。この酸によって歯のエナメル質が溶け、虫歯が形成されます。細菌感染症の一種と言えます。
酸蝕症は、食品や飲料物中の酸性成分が直接歯の表面に作用し、歯のエナメル質を脆くし溶かす状態を指します。細菌による感染は関与せず、主に飲食物や生活習慣が原因です。
要するに、虫歯は細菌感染による病気であり、酸蝕症は食品や飲料中の酸による歯の侵食です。どちらも歯の健康に悪影響を及ぼす重要な問題ですが、原因と予防方法は異なる点に注意が必要です。

なぜ酸蝕症になるの?

酸蝕症の原因は大きく2つにわけることが出来ます。

内因性の酸蝕症

内因性の酸蝕症は、主に胃酸が逆流して口腔内に入ることによって引き起こされます。たとえば、過食症や拒食症などの摂食障害により、頻繁な嘔吐が起こると、胃酸が口腔内に到達して歯に酸性の刺激を与え、エナメル質が侵食される可能性があります。こうした摂食障害を抱える方は、酸蝕症にも留意する必要があります。

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胃酸によるダメージ

さらに、胃食道逆流症(GERD)として知られる現象も、胃酸が食道に逆流することによって歯に影響を与える要因です。この状態は、食道と胃の接続部が異常に狭くなることで引き起こされ、嘔吐反射も刺激されることがあります。また、大量のアルコール摂取に伴い頻繁な嘔吐が生じる習慣がある場合も、酸蝕症を発症しやすい状況です。

したがって、内因性の酸蝕症は主に胃酸の逆流に起因するものであり、摂食障害や胃食道逆流症、過度なアルコール摂取に注意が必要です。

外因性の酸蝕症

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ソフトドリンクによるリスク

外因性の酸蝕症は、主に高い酸性度を持つ飲食物を日常的に摂取することが主な要因です。”高い酸性度”と言っても、酢やレモンだけでなく、ジュースや炭酸飲料、ワインなど、涼しい飲み物にも含まれます。特に、スポーツドリンクは見過ごされがちです。こうした飲み物が歯に直接作用することで、歯のエナメル質が脆くなり、酸蝕症が発症するリスクが高まります。
夏の水分補給には理想的な選択肢とされるスポーツドリンクは、ミネラルを摂取できる上に透明で口当たりも良く、健康に良いと認識されています。そのため、暑い時期になると気軽に飲むことが増えます。しかしながら、スポーツドリンクには多くの糖分が含まれているだけでなく、酸性度もやや高い傾向があります。そのため、これを飲むたびに歯のエナメル質が侵食され、酸蝕症のリスクが高まることに留意が必要です。
また、酸性のガスを吸い込むことでも酸蝕症になるリスクは高まります。
例外的なケースではありますが、塩酸、硫酸、硝酸などのガスが発生する工場で働いている人々も、外因性の酸蝕症に影響を受ける可能性があります。酸蝕症の原因は必ずしも液体である必要はありません。おそらく、こうした環境で勤務されている方々は、職場の健康診断などで十分な注意を喚起されていることかと考えられます。

どういう症状が出るの?

エナメル質が溶ける

酸蝕症による主な症状は、歯の組織である歯質の溶解です。酸が作用することで、歯を覆うエナメル質が徐々に溶け出す現象が生じます。この過程は虫歯と共通しているものの、歯の組織が溶け出す方法に違いが見られます。通常の虫歯では、1〜2mm程度の小さな領域からエナメル質が侵食されるのに対し、酸蝕症では比較的広い範囲が影響を受けることがあります。歯の表面全体が均等に溶け出すことも珍しくありません。

象牙質が露出する

酸蝕症の進行により、歯のエナメル質の下にある象牙質が露出し、象牙質が無防備な状態になります。この点は虫歯と共通していますが、酸蝕症では歯が溶ける範囲が広いため、露出する象牙質も広がることがあります。その結果、歯全体が黄色味を帯びることがあり、外観の美しさに影響を及ぼすことがあります。要するに、酸蝕症は歯の構造を損ねるだけでなく、外見的な側面にも影響を及ぼす疾患と言えるでしょう。

知覚過敏になる

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酸蝕症による知覚過敏 

象牙質には、歯の神経が一部含まれています。熱や冷たい刺激が口に入ると、象牙質内の神経が反応し、歯がしみる現象が生じます。これが象牙質知覚過敏症として知られるものです。さらに、エナメル質ほど強くはなく、酸に対する耐性も劣るため、象牙質は虫歯のリスクが高まる組織です。したがって、酸蝕症の影響によって象牙質が傷つくと、歯の知覚過敏だけでなく虫歯の発症リスクも増加することに留意が必要です。

なぜ酸蝕症が増えているの?

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飲みすぎは注意が必要

近年、酸蝕症の患者数は増加しています。この傾向の背後には、食習慣の変化が影響しています。具体的には、清涼飲料水やスポーツドリンク、ワインなどの酸性度の高い飲食物の過度の摂取が挙げられます。特に、ジュースや炭酸飲料の過剰な摂取は、酸蝕症だけでなく虫歯のリスクも高める要因です。ただし、スポーツドリンクに関しては少し複雑な状況です。これは、全身の健康を考慮すると、スポーツドリンクの摂取を適切に行うことが推奨されることから、そのバランスを取る必要があるからです。
夏の時期には多くの人が汗をかき、脱水症状による体調不良を経験することが増えます。深刻な場合には、意識喪失などの状態で病院へ運ばれることもあります。そのため、脱水症状を予防するためには、定期的な水分補給が非常に重要です。社会全体でも、夏季にはナトリウムなども含まれるスポーツドリンクが、水分補給の選択肢として推奨されることが一般的です。これは間違ったことではありませんが、頻繁な摂取によって口内が酸性になり、酸蝕症の発症が促される可能性があります。酸蝕症の増加の一因として、こうした社会的な動向や考え方の影響も考慮すべきです。

酸蝕症の予防方法

内因性の酸蝕症の予防方法

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内因性は医師との相談も必要
摂食障害の管理

過食症や拒食症などの摂食障害を抱えている場合は、適切な治療とサポートを受けることが大切です。嘔吐の頻度を減少させることで、口腔内への胃酸逆流を抑制できます。

健康的な食事習慣の確立

健康的でバランスの取れた食事を摂ることで、胃酸逆流のリスクを軽減できます。食事を適切に摂ることで胃の状態を安定させ、逆流を防ぐことができます。

嘔吐の制御

嘔吐行為を控えるための方法や対策を学び、胃酸逆流のリスクを低減する努力を行うことが大切です。医師や専門家のアドバイスを受けることで、効果的な制御方法を見つけることができます。

定期的な歯科検診

歯科医師の定期的な診察を受けることで、早期に酸蝕症の兆候を発見し、適切なケアを受けることができます。歯科医師からのアドバイスを受けながら、口腔の健康を保つことが重要です。

歯磨きとケア

歯を優しく磨くことでエナメル質を保護し、酸蝕症から守ることができます。ただし、歯磨き直後はエナメル質が脆弱なため、飲食を控えることがおすすめです。

保護剤の塗布

歯科医師の指導に従い、フッ素やカルシウムなどの保護剤を使用することで、歯のエナメル質を補強することができます。

外因性の酸蝕症の予防方法

飲食物の選択

酸性度の高い飲食物や飲み物を適度に制限することが大切です。特に、炭酸飲料、ジュース、スポーツドリンク、酸味の強い食品を過剰に摂取しないように心掛けましょう。

ストローの使用

酸性飲料を飲む際にはストローを使用することで、歯の表面への直接的な接触を減少させることができます。

水の摂取

水をこまめに摂ることで口腔内の酸性度を中和し、歯を保護する助けになります。飲食物の摂取後に水を飲む習慣をつけることがおすすめです。

歯磨きのタイミング

酸性飲料や食品を摂った後に直ちに歯を磨くのではなく、少なくとも30分から1時間ほど時間をおいてから歯磨きを行うことで、エナメル質の脆弱性を避けることができます。

歯磨きの方法

歯を磨く際には適切な歯磨き粉や歯ブラシを選び、優しく磨くことが大切です。硬いブラシや強い力で磨くとエナメル質が傷つく可能性があるため、注意が必要です。

保護材の使用

歯科医師の指導に従い、フッ素などの保護剤を使用することで、歯のエナメル質を補強し、酸蝕症から守ることができます。

これらの方法を実践することで、酸蝕症のリスクを軽減し、口腔の健康を保つことができます。歯科医師・歯科衛生士のアドバイスを受けながら、適切なケアを行うことが大切です。

当医院は幅広い疾患に対応しております

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